変形性関節症とは

変形性関節症のイメージ写真

関節は軟骨と滑膜に覆われています。関節症では機械的刺激などにより軟骨の変性・磨耗を生じ、また関節周囲を取り囲む滑膜の炎症が併発して変性が加速します。
同時に、変性した軟骨が骨棘と言われる増殖性変化を起こして関節変形が起こります。それらの変化により血管増生や神経線維の増生をともなう関節包の線維化が起こり痛みを感じやすくなります。さまざまな場所に関節症は起こりますが、その中でも、荷重関節として歩行に関わる股関節や膝関節に発症すると、日常生活に大きな支障をきたします。

主な変形性関節症

変形性膝関節症

男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。主な症状は膝の痛みと水がたまることです。初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時に痛み、休めば痛みは改善します。中期になると正座や階段の昇降が困難となり、末期になると、安静時にも痛みあり、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になります。
原因は加齢に伴う関節軟骨の老化によることが多く、肥満や素因(遺伝)も関与しています。また骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することがあります。加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使い過ぎによりすり減って関節が変形します。
治療は、まず生活習慣の見直しが大切です。肥満気味の方はこれ以上負担がかからないように減量したり、強い痛みがある場合は激しい運動を控えるほか、関節軟骨への負担軽減のためにふとももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えるなどしていきます。強い痛みがあれば、サポーター装着、消炎鎮痛薬の内服や貼付薬、関節内注射(ヒアルロン酸)、運動器リハビリテーションを組み合わせて治療します。
このような治療だけでは症状が改善しない、関節の変形がひどいという場合は手術療法となります。年齢や変形の程度によりますが、骨切り術や人工関節置換術などの選択肢があります。

変形性股関節症

何らかの原因で、股関節の軟骨がすり減ったり変性するなどして、股関節の骨が変形・破壊されている状態が変形性股関節症です。原因については、原因が特定できない一次性と、特定の病気がきっかけとなって発生する二次性に分けられます。二次性の原因としては、子供の頃に発症した病気(発育性股関節形成不全、化膿性股関節炎 等)が原因となっていることが多く、そのほかでは、関節リウマチ、骨粗しょう症などの病気、肥満、スポーツ等による酷使が挙げられます。患者様の多くは女性で、40~50歳を過ぎた頃から発症するようになります。
主な症状として、初期の頃は体重のかかる荷重時や、運動時などに股関節に痛みが出るようになります。また必ずしも股関節に痛みがみられるわけではなく、腰、大腿、臀部などの部位で痛みを訴えることもあります。病状が進行すると痛みに加えて可動域も制限され、足の爪切りが困難になったり、靴下が履きにくくなったり、和式トイレ使用や正座が困難になります。また長い時間立ったり歩いたりすることがつらくなりますので、台所仕事などに支障を来たします。階段や車・バスの乗り降りも手すりが必要になります。
治療として、まず保存療法から開始します。具体的には、股関節の負担を減らすために、肥満の方は減量に努める、杖を使う、筋力をつけるなどを行います。痛みに対しては、鎮痛薬などの使用も検討されます。これらの治療だけでは改善が難しい場合、手術療法として骨切り術や人工股関節全置換術が行われます。

変形性脊椎症

脊椎とは一般的には背骨と呼ばれる部分です。加齢に伴って、骨や関節、椎間板(椎骨と椎骨の間にあるクッションの役割をする組織)、靱帯等が変性します。腰の部分(腰椎)にこのような変性がみられると変形性腰痛症、首の部分(頸椎)でみられると変形性頚椎症と診断されます。椎間板の変性が進むなどして骨棘を形成し、神経を圧迫するようになると、腰部や頸部などの部位に痛み、しびれ、麻痺などがみられたり、上肢や下肢に痛みやしびれを生じることがあります。軽度であれば保存療法(薬物療法、リハビリ等)による治療が行われますが、背骨の中(脊柱管)を通る脊髄神経の症状により、手指で細かい動作ができない症状(巧緻性障害)や、長時間歩くことができない症状(間欠性跛行)の悪化により、日常生活に支障をきたすほど病状が進行している場合や、脱力感や膀胱直腸障害をきたしている場合は、手術療法による外科的治療が必要となります。